目次
事件の概要
2024年7月22日、兵庫県赤穂市の赤穂市民病院で発生した医療事故に関与した脳神経外科医2人が業務上過失致傷の疑いで書類送検されました。事件は、令和元年から令和2年にかけて8件の医療事故が相次いだことが発端となっています。これにより、手術を受けた患者のうち2人が死亡し、6人に障害が残る結果となりました。
書類送検された医師たち
40代男性医師
この医師は、令和元年7月に赤穂市民病院に着任し、脳神経外科に所属していました。彼が担当した手術の中で、特に問題となったのは腰痛を訴えていた70代女性患者の手術でした。この手術で、ドリルで腰椎の一部を切除する際に適切な止血を行わず、結果として脊髄神経を損傷させるという過失が発生しました。手術後、女性は両足の麻痺や排泄障害などの重度の後遺障害が残りました。この医師は令和3年8月に病院を依願退職しました。
50代の上級医
この医師は、上記の男性医師の上司であり、注意義務を怠ったとして書類送検されました。彼もまた、業務上過失致傷の疑いでの送検となりました。
医療事故の詳細
腰椎手術の過失
令和2年1月に行われた手術で、適切な止血を行わなかったために脊髄神経を損傷させたことが問題となりました。この手術によって70代女性患者は重大な後遺障害を負うこととなりました。
頸椎手術の過失
他にも、後縦靱帯骨化症を患う女性患者に対する頸椎手術でも過失がありました。頸髄を損傷させる結果となり、患者に深刻な影響を与えました。
赤穂市民病院の対応と問題点
遅れた対応
病院は医療事故発生時の対応を定めた内規「医療安全対策実施要項」に基づき、事故が発生した場合は24時間以内に報告書を提出し、事故調査委員会を設置することが求められていました。しかし、実際には6件目の事故後に初めて病院に報告され、その後も外部機関との情報共有や事故調査委員会の設置までに約2年を要しました。
ガバナンスの欠如
病院内で医療安全の考え方が浸透しておらず、統治が機能していなかったことが明らかになりました。これにより、重大な医療事故が短期間に複数件発生するという事態を招きました。
専門家の意見
名古屋大学の長尾能雅教授(患者安全学)は、「病院が手術を止めたことは適切だが、短期間で8例の事故が起きた事実は弁明のしようがない」と指摘しています。また、「多くのスタッフや指導者は異変に気付いていたはずで、不適切な医療をより早期に発見し、中止できる体制を構築することが必要」と述べています。
患者とその家族の声
患者の苦しみ
手術を受けた70代女性患者は、手術前は自力で歩行が可能でしたが、手術後は自力での起立や歩行が困難となり、車椅子での生活を余儀なくされています。
家族の悲しみと憤り
患者の親族は、病院から納得のいく説明がなく、不誠実な対応に心が痛んだと述べています。「どうして何度もつらい思いをしないといけないのか」と憤りを感じており、一生後悔の念が消えることはないと語っています。
まとめ
赤穂市民病院で発生した一連の医療事故は、適切な医療安全対策が講じられなかったことが原因となっています。書類送検された医師たちの過失と、病院の遅れた対応により、多くの患者とその家族が苦しみを味わうこととなりました。今後は、より厳重な監視体制と迅速な対応が求められます。医療の現場では、何よりも患者の安全が最優先とされるべきです。
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