日本のフェミニスト・社会学者として知られる上野千鶴子(うえの ちづこ)氏は、1948年7月12日に富山県中新川郡上市町で生まれました。専門は家族社会学、ジェンダー論、女性学で、東京大学名誉教授としても知られています。彼女はNPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN) の理事長や、日本社会学会理事、元関東社会学会会長(2005年-2006年)など、多くの役職を歴任しています。また、2024年には米タイム誌「世界で最も影響力のある100人」に選出されるなど、その影響力は国際的にも認められています。
上野千鶴子の幼少期と家族構成
上野千鶴子氏は、満州国から帰国した内科医の父親と専業主婦の母親のもとに生まれました。生まれた場所は両親の疎開先であったことから、戦後の影響を受けた家庭環境で育ったことが伺えます。兄が一人、妹が二人おり、彼女自身は裕福な家庭で育ちました。幼少期から自分の意見を持つことが許される環境で育ち、男性に引けを取らない自己主張を行うことができたといいます。この家庭環境が、彼女の強い個性と独立心を育んだのかもしれません。
上野千鶴子学歴と学生時代の活動
上野氏は、京都大学文学部哲学科社会学専攻を卒業後、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程に進学しました。彼女は大学時代に学生運動と遭遇し、それが彼女の思想形成に大きな影響を与えました。特に、全共闘運動において、男女間の不平等や女性差別を経験し、フェミニストとしての立場を強固にしました。彼女は当時の経験を通じて、フェミニズム運動における理論と実践の重要性を強く感じたといいます。
学術的キャリア
1979年に平安女学院短期大学の専任講師として学術的キャリアをスタートし、その後、京都精華大学や東京大学などで教授職を務めました。1995年からは東京大学大学院人文社会系研究科教授を務め、その後、東京大学名誉教授となりました。彼女の著書『家父長制と資本制』や『おひとりさまの老後』などは、家族社会学やジェンダー論の分野で重要な位置を占めています。
社会的活動と影響力
上野千鶴子氏は、学術的な活動だけでなく、社会的活動にも積極的に取り組んでいます。NPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN) の理事長として、女性の権利向上やジェンダー平等の推進に尽力しています。また、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」の共同代表としても活動しており、差別や偏見に対する啓発活動を行っています。
最近の活動と受賞歴
2021年からは、野村ホールディングスダイバーシティ・フォーラムの講師も務め、ダイバーシティ推進に関する知見を広めています。彼女の業績は多岐にわたり、2024年には米タイム誌「世界で最も影響力のある100人」に選出されるなど、その活動は国際的にも高く評価されています。
上野千鶴子氏は、フェミニズムと社会学の分野での先駆者として、長年にわたり積極的に発言し続けてきました。彼女の生い立ちや学歴、そして多岐にわたる活動を通じて、日本社会におけるジェンダー平等の実現に向けた彼女の貢献は計り知れないものがあります。これからも彼女の活動に注目が集まることでしょう。
上野千鶴子氏、パリ五輪報道に苦言:「アスリートに国家など背負ってほしくない」と主張
社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子氏が、7月4日に自身のX(旧Twitter)を更新し、パリ五輪期間中の報道に対して批判的な意見を表明しました。上野氏は、日本のフェミニズムやジェンダー論の分野で著名であり、長年にわたり社会的な問題について積極的に発言してきました。
上野氏の発言内容
上野氏は、Xで次のように述べています。「マスメディアの報道はオリンピックばかり。うんざりする」とし、昨今のオリンピック報道の過度な集中に対する不満を表明しました。さらに、「アスリートに国家など背負ってほしくない。彼らがだんだんエゴイストに見えてくる」と続け、アスリートが国家の象徴として扱われることへの批判を展開しました。
上野氏のこの発言は、オリンピックにおける商業主義やナショナリズムの影響についても疑問を投げかけていると解釈されています。彼女の意見は、スポーツと政治の絡み合い、特に国威発揚や商業的利益に利用されるアスリートの姿に対する批判としても受け取ることができます。
反応と議論
この投稿には、様々な反応が寄せられました。「今回は、ほんとうにそうゆう感じがしますね」「まやかしの平和の祭典。商業主義」「東京五輪から続く、オリンピックに対して批判的な意見を言いにくい空気感は、本当に嫌な感じがします…」など、上野氏の意見に賛同する声がある一方で、「何で日本だけスポーツ選手を讃えると悪いんですか?」「何故そんな事を言うのか…。努力して道を極めたものは美しいじゃないか…」「嫌なら見なければ良いだけ」といった反対意見も寄せられています。
賛同する意見の中には、オリンピックが「平和の祭典」としての理念を超え、商業主義やナショナリズムの影響が強まっているとの批判が見受けられます。一方で、反対意見では、アスリートたちが努力を重ねて成し遂げた成果を称賛することの重要性が強調されており、彼らが国家の代表としての役割を果たすことの意義を肯定する声もあります。
上野千鶴子氏の背景と影響力
上野千鶴子氏は、日本における女性学のパイオニアとして知られ、家族社会学、ジェンダー論、女性学の分野で多くの研究と発言を行っています。彼女の著書『家父長制と資本制』や『おひとりさまの老後』などは、社会学の視点から日本社会におけるジェンダーや家族の問題を掘り下げた重要な作品として広く読まれています。
今年4月には、米タイム誌が発表する毎年恒例の「世界で最も影響力のある100人」に選出され、彼女の活動と影響力が国際的にも認められました。このような背景から、上野氏の発言は多くの注目を集め、広範な議論を呼び起こしています。
上野氏の発言が提起する課題
上野氏の今回の発言は、オリンピックにおけるナショナリズムと個人の成績の関係性についての議論を深めるきっかけとなりました。スポーツが国家のアイデンティティを形成する手段として利用されることへの批判は、新たな視点を提供するとともに、スポーツと社会の関係性について考える契機となっています。
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